プレスリリース
マラリアの研究開発に携わるリーダーが日本に集結 次世代の予防と治療方法の開発に向けた連携強化
· 国内外のステークホルダーが東京に集結:マラリアの研究開発のパイプラインの最新情報を共有。マラリアの制圧、排除、撲滅に向けた連携の強化
· 日本がグローバルな研究開発を支援:薬剤耐性や持続性の高い予防ツール開発に向け、国際連携を推進
· 高まる日本の科学技術と投資への期待:薬剤耐性、気候変動、脆弱な保健医療システムに対して、グローバルヘルス・セキュリティ(国際保健安全保障)の観点から日本の知見と投資が不可欠に
公益社団法人グローバルヘルス技術振興基金(以下、GHIT Fund)、Medicines for Malaria Venture(以下、MMV)、ゲイツ財団は、2026年7月21日に「Japan symposium on malaria research and development (R&D)/マラリア研究開発 日本シンポジウム」を開催しました。
本シンポジウムには、主要な研究開発者、国際機関、資金提供者、そしてマラリア対策に携わるリーダーが一堂に会し、マラリアの研究開発パイプラインの進捗、日本の創薬の強み、グローバルヘルス・セキュリティの向上ならびにマラリアの制圧、排除、根絶に向けた取り組みの加速化について、活発な意見交換が行われました。終日にわたる様々なセッションを通じて、新たな治療薬や診断技術の開発において、日本が極めて重要な役割を果たしていることが改めて浮き彫りとなりました。主な参加者には、エーザイ株式会社、国立健康危機管理研究機構(JIHS)、エルピクセル株式会社、長崎大学、塩野義製薬株式会社、田辺ファーマ株式会社、東京大学などが含まれています。
マラリアの排除に向けたグローバルヘルスの最優先課題
マラリアは、世界で毎年2億8,000万人以上が罹患し、約61万人の命を奪っている深刻な感染症です。日本では1962年にマラリア根絶を達成していますが、世界では依然として「世界三大感染症*1」の一つであり、グローバルヘルスにおける最優先課題となっています。
厚生労働省大臣官房 国際保健福祉交渉官の江副聡氏は次のように述べています。「1940年代、日本はマラリアの深刻な脅威に直面していましたが、官民が一体となった粘り強い取り組みによって、その後根絶を達成しました。現在、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の実現に向けて邁進するなかで、世界におけるマラリアの根絶は日本にとって引き続き極めて重要な使命です。私たちはパートナー諸国と足並みを揃え、産・官・学の強力かつ統合的な連携を促進することで、この地球規模の課題への取り組みに尽力してまいります。」
今世紀に入ってからの20年間でマラリア対策は大きな進展を遂げたものの、抗マラリア薬への耐性、気候変動による影響、脆弱な保健医療システムといった新たな脅威により、その歩みは停滞しています。こうした課題のなかで、2030年までにマラリアの罹患率と死亡率を90%削減するという世界保健機関(WHO)の目標を達成するためには、持続的なイノベーションとより強固な国際協調が不可欠です。そして、これらの困難を乗り越え目標を達成する上で、創薬イノベーション、学術研究、そしてグローバルヘルスのリーダーシップにおける日本の長年にわたる優れた知見を活用することが極めて重要です。
日本のマラリア対策における科学的貢献
GHIT Fundが設立した2013年以来、MMVはGHIT Fundを通じて日本のパートナー企業、研究機関と緊密に連携し、世界のマラリア対策の優先課題と日本が強みを持つ創薬、医薬品化学およびトランスレーショナル・リサーチ(橋渡し研究)の専門的な知見を結びつけてきました。GHIT Fundはこれまで、国内外のパートナーに100件以上のマラリア研究開発に投資(助成)をしており、その総額は約200億円にのぼります。また、その約半分は、MMVと日本のパートナーによる共同プロジェクトへの投資(助成)です。これらの投資対象は治療薬、ワクチン、診断薬と多岐にわたり、創薬の初期段階から非臨床試験、そして14の臨床試験プロジェクト*2に至るまで多層的な展開を見せています。
現在、MMVはGHIT Fundの支援のもと、田辺ファーマ、エーザイ、塩野義製薬とそれぞれ共同で製品開発を進めています。MMVは、持続性が高い(長期作用型)マラリア予防ツールの開発や、既存薬の有効性を高めるためのアルテミシニン誘導体を組み合わせた三剤併用療法(TACT)の開発を推進しています。現在、第Ⅲ相臨床試験段階にあるこのTACTは、これまでの初期臨床試験において、アルテミシニンへの耐性が極めて強い地域でも非常に高い有効性を示すことが確認されています。
これらの実績は、製品開発から現場へ届ける(アクセス)までを見据えたパートナーシップの構築に至るまで、世界のマラリア対策において日本の果たす役割が拡大し続けていることを示しています。
「日本は、卓越した科学技術力とグローバルな現場への実装力を融合させ、次世代のマラリア・イノベーションを先導できる唯一無二のポジションにあります。GHIT Fundは、日本の世界最高水準の研究開発力と、マラリア流行地域における切実かついまだ解決されていない医療課題(アンメット・メディカル・ニーズ)との架け橋となっています。革新的な研究の成果を、命を救う治療薬、ワクチン、診断薬という具体的なソリューションへと転換し、必要としている人々に最新の研究成果を確実に届けるため、私たちはインパクトの大きいパートナーシップを推進してまいります」とGHIT FundのCEO兼専務理事である國井修は述べています。
マラリア研究開発日本シンポジウムを開催
マラリア研究開発における日本の幅広い貢献を踏まえ、本シンポジウムでは創薬から製品開発にいたる科学的進歩に焦点が当てられました。当日のセッションは持続性マラリア予防ツールの開発プロジェクトや、AIを活用した細胞イメージング解析技術(セル・ペインティング解析技術)、ベクターコントロールにおけるイノベーションなど、最先端の共同研究に関する知見が発表されました。また、塩野義製薬や愛媛大学が主導するマラリア予防のためのR&Dイノベーションのほか、栄研化学株式会社、国立健康危機管理研究機構(JIHS)、三井化学クロップ&ライフソリューション株式会社によるマラリア根絶に向けたベクターコントロールの戦略的展望について活発な議論が交わされました。
シンポジウムのプログラムは、初期段階の探索やスクリーニング、次世代の治療法に至るまで、マラリア研究開発の全領域を網羅するものとなりました。セッションでは、標的の同定や新しいスクリーニング手法、アカデミア主導の創薬における日本発のイノベーションが紹介されたほか、MMVとのパートナーシップによる医薬品開発プログラム、そして科学的知見を患者のもとへ届く製品へと社会実装した数々の成功事例が発表されました。
MMVのCEOであるマーティン・フィチェットは次のように述べています。「マラリアは進化を続けており、私たちの対策もそれに応じて進化しなければなりません。持続性注射剤や治療薬の単回投与治療など、現在の製品開発パイプラインを見れば、グローバルな連携と優れた科学技術を組み合わせることで、いかに大きな成果を生み出せるかがわかります。日本はこのエコシステムにおいてますます重要な存在となっており、本シンポジウムは、イノベーションをより迅速かつ遠方まで届けるために、その結びつきをさらに強化することを目的としています」
今後もGHIT Fund、MMV、ゲイツ財団は、マラリア根絶に向けた製品開発を加速するためにアカデミア、産業界、製品開発パートナーシップ(PDP)、国際機関、そして各国政府による継続的な連携を進めていきます。
注記
*1: 世界三大感染症とは、エイズ(HIV感染症)、結核、マラリアを指します。
*2: この数値には、中止または完了したプロジェクトへの投資も含まれています。